2024年11月11日公開
「将来役立つ資格を取得しておきたい」「さまざまな業界で活かせる資格を取得したい」と考える人は多いでしょう。
宅建士は、不動産業界未経験の人にも人気のある資格で、活躍の幅が広いことが特徴です。
この記事では、宅建士の資格取得のメリットや試験の概要などを解説します。
宅建士に求められるスキルも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
宅建士(宅地建物取引士)とは
宅建士とは、「宅地建物取引士」の略称で、宅地建物取引業法に定められた業務を行う不動産取引の専門家のことです。
宅建士は国家資格であり、毎年20万人前後の人が受験する人気の高い資格です。
特別な受験資格はなく、日本国内に居住する方であれば、年齢や学歴に関係なく、誰でも受験できます。
宅建士は主に宅地建物取引業者(不動産会社)で土地や建物の売買や賃貸物件のあっせん業務に従事します。
不動産の売買や賃貸は高額な取引となるため、知識のない状態で契約を結んでしまうと思わぬトラブルが発生する場合があります。
トラブルの発生を回避し、お客様が事前に把握しておくべき重要事項について説明することが宅建士の役割です。
宅建業者には、従業員5名につき1名以上の宅建士を設置しなければならない義務があるため、宅建士は需要の高い職業であるといえます。
独占業務である宅建士の仕事内容
宅建士には、独占業務があります。
独占業務とは、その資格を有する者でなければ携わることを禁じられている業務のことで、
万が一無資格者が独占業務を行った場合、法律違反として懲役もしくは罰金刑が科されます。
宅建士の独占業務は、以下の3つです。
●契約前に必要な重要事項の説明
●重要事項説明書(35条書面)への記名
●「37条書面」への記名
それぞれの詳細を解説します。
■独占業務1. 契約前に必要な重要事項の説明
宅建士は、お客様が購入する(または借りる) 不動産の「登記名義人」「不動産の広さ」
「電気水道ガスなどのインフラの整備状況」「契約解除の場合の条件」などの重要な事項を契約前に説明します。
このことを、「重要事項の説明」と呼びます。
説明内容が記載された文書は「重要事項説明書」と呼ばれ、不動産取引におけるトラブルを回避するために宅建士が説明することが義務づけられている書類です。
■独占業務2. 重要事項説明書(35条書面)への記名
重要事項の内容は多岐にわたり、専門的な内容も含まれるため、口頭の説明のみですべてを把握することは簡単ではありまん。
後からトラブルが生じた際に、本当に重要事項を説明したのか問題になることもあるでしょう。
そこで、重要事項の内容を記載した「重要事項説明書(35条書面)」を作成し、お客様へ交付します。
重要事項説明書には宅建士の記名が必要で、記名によって重要事項をお客様へ説明したという事実の証明になります。
■独占業務3. 「37条書面」への記名
37条書面とは、不動産契約が成立したタイミングで交付が義務づけられている契約内容記載書面のことで、
不動産契約をめぐるトラブルを回避するために重要な役割を果たします。
説明および交付は宅建業者が行いますが、記名は35条書面と同様に、宅建士が行わなければなりません。
37条書面には、「支払額」「引渡し時期」「移転登記申請時期」などの項目が記載されています。
宅建士の資格を取得するメリット
宅建士の試験に合格し、登録講習・登録等の手続きを踏むと、宅建士として働け、先に述べた独占業務に従事できるようになります。
宅建士の資格取得には、他にもさまざまなメリットがあります。
主なメリットは、以下の3つです。
●さまざまな業界で活躍できる
●収入アップが期待できる
●ダブルライセンスで活躍の場が広がる
それぞれの詳細を解説します。
さまざまな業界で活躍できる
さまざまな業界で活躍できることは宅建士のメリットです。
とくに、不動産業界への就職や転職を目指す人にとっては、資格取得は大きなアドバンテージとなるでしょう。
また、宅建士の資格が活かせるのは不動産業界だけではありません。
建築業界や金融業界でも資格を活かせるポジションがあります。
近年では、日本全国に支店を展開する大手企業やIT企業などにおいても宅建士のニーズが高まっています。
収入アップが期待できる
宅建業者には、従業員5名につき1名以上の宅建士を設置しなければならない義務があり、宅建士は宅建業者の存続に欠かせない存在です。
そのため、企業によっては宅建士の資格を取得すると、資格手当がつくことがあります。
金額はさまざまですが、毎月の給与に数千円~数万円が上乗せされて支給されるのが一般的です。
一度資格を取得すれば継続して手当が支給されるため、大きな金額となります。
ダブルライセンスで活躍の場が広がる
宅建士の試験内容は他の資格と重複している部分が多く、学習した内容は他の試験にも活かせます。
ダブルライセンスとしておすすめなのは、マンション管理士や賃貸不動産経営管理士などです。
れらの資格の取得によって、宅建士としての活躍の幅がさらに広がるでしょう。
他にも、日商簿記2級やFP資格などもダブルライセンスとしておすすめです。
宅建士の仕事に求められるスキル
不動産取引は、さまざまな法律や権利関係が絡む複雑な取引です。
宅建士の資格があれば未経験でも応募可能な求人は多くありますが、宅建士としてより活躍するために、もっていたほうがよいスキルをご紹介します。
宅建士に求められる主なスキルは、以下の3つです。
●正確かつ計画的に仕事を進めるスキル
●コミュニケーションスキル
●問題解決スキル
それぞれの詳細を解説します。
正確かつ計画的に仕事を進めるスキル
不動産取引は金額が大きく、1つのミスが大きなトラブルに発展するおそれがあるため、慎重に仕事を進める必要があります。
そのため、宅建士には正確かつ計画的に仕事を進めるスキルが求められます。
不動産取引においては、買い手や借り手に対して詳細な説明が必要であり、関連する法律も多岐にわたります。
万が一、宅建士の説明にミスがあると、後々契約の解除につながったり、お客様に損失を与えてしまったりするおそれがあるため、注意が必要です。
一つひとつの契約に関して確認を怠らず、専門家として責任をもって業務にあたる必要があります。
コミュニケーションスキル
宅建士は、一般のお客様や経営者、地主など、さまざまな人と関わりながら仕事を進めます。
そのため、高いコミュニケーションスキルが必要です。
とくに、不動産の取引に用いる書類には専門用語が多く、不動産に馴染みのない人にとってはわかりにくい部分が多くあります。
それらをかみ砕いてわかりやすく説明し、納得してもらうことが大切です。
相手とのやり取りから相手の経験値や年代、性格などを読み取り、相手に合ったコミュニケーションを取れる宅建士なら、多くの人から信頼され、活躍の幅を広げていけるでしょう。
問題解決スキル
トラブルやクレームをスムーズに解決できる問題解決スキルも、宅建士に求められる能力です。
不動産取引においては、慎重に取引を進めても、トラブルやクレームが発生してしまうことがあります。
宅建士は、売り手と買い手(または貸し手と借り手)の板挟みとなり、難しい立場で問題解決にあたることになります。
宅建士は、双方の言い分に耳を傾け、問題点を明確にして、問題点を解決できる代替案を提示しなければなりません。
トラブルが大きくなれば、宅建業者や宅建士自身の信用を損なうことにもなりかねないため、慎重な対応が求められます。
トラブルに動じることなく、論理的な視点で問題解決にあたれる人は、宅建士に向いているといえるでしょう。
宅建士の試験概要と難易度
宅建士の試験概要と難易度を解説します。
試験日 |
毎年1回、10月の第3日曜日 |
受験手数料 |
8,200円 |
試験会場 |
47都道府県 |
受験手続きの流れ(令和6年度から) |
試験案内の掲載・配布 受験申込の受付 受験票の送付 試験の実施 合格者の発表 |
試験内容 |
・試験形式は、4肢択一のマークシート方式 ・出題数は50問で、1問1点として50点満点で計算される ・基準点を超えれば合格できる絶対評価試験ではなく、受験人数や合格率の調整によって合格の基準点が毎回変動する相対評価試験 ・試験時間は、2時間 |
試験科目 |
・「民法等」「宅建業法」「法令上の制限」「その他関連知識」の4科目 ・それぞれ問題数が異なる |
合格率は、過去10年を遡ると15~17%で推移しており、難関資格といえるでしょう。
合格の基準点は毎回異なりますが、50点満点中、31〜38点です。およそ75%正解できれば、合格できるでしょう。
なお、試験に合格後、宅建士として業務に従事する場合は受験した試験地の都道府県の登録を受ける必要があります。
登録を申請する時点で実務経験がない場合は、実務講習の受講も必要です。
宅建士の仕事内容を理解し資格取得を目指そう
宅建士は国家資格として広く認知された人気の高い資格であり、不動産業界をはじめとしたさまざまな業界で活躍できる資格です。
不動産業界を目指す人は、取得しておくと就職や転職の際に有利に働くでしょう。
すでに不動産業界で働いている人も、資格を取得することで収入アップや仕事の幅を広げることにつながります。
宅建士の試験は範囲が広く、合格率は15~17%と、簡単に合格できる試験ではありません。
試験の傾向をしっかり把握したうえで、計画的に学習に臨みましょう。